サーファーズイヤーの外耳道炎: 治療のコツ
この記事はサーファーズイヤーの手術経験数400耳以上の専門医が執筆しています。
サーファーズイヤーの方が外耳道炎を起こすと
外耳道が極端に狭いため、処置が難しいことがあります。
急に聞こえが悪くなり、なかなか良くならないので驚かれる方が多いです。
近くの耳鼻咽喉科で見てもらったけど、
良くならない!聞こえない!痛い!
とご連絡をいただくことがあります。
通常の外耳道炎であれば
ステロイド軟膏処置や、
点耳薬(抗生剤やステロイド)
抗生剤内服程度で、あっさり改善することが多いです。
しかし...
高度のサーファーズイヤーの病変があり、鼓膜が見えないくらいの方が
外耳道炎を起こすと
下記のような悪循環のサイクルにはまり、なかなか良くなりません。
①外耳道の炎症、感染
↓
②外耳道の皮膚が腫れる、痛みがでる
↓
③点耳薬も届かず、処置困難
↓
①へ戻って悪循環のサイクルへ
ここでは私の行っている処置を公開します。
これが一番良い方法かどうかわかりませんが、
多くのサーファーの外耳道炎を診察し、
なんとか消炎しようとアレコレ試しながら効果のあった方法です。
いろいろな手技があるので、実際にはこれらを組み合わせて行っています。
ここでは、サーファーの外耳道がパンパンに腫れていて、
感染や痛みを伴っているようなケースを想定しています。
【診察時にチェックすべきポイント】
まず外骨腫(サーファーズイヤー)がどのような形状なのか確認します。
→外耳道の皮膚が炎症で腫れているので、不用意にさわるとさらに腫れて処置困難になります。出血もしやすいです。
適切な清掃処置のために、まずは形状の把握が重要です。
外耳道の皮膚がパンパンに腫れて、隙間がどこにもない場合は
対側耳のカタチを参考にします。
反対側の耳の外骨腫の形態は、程度の軽いミラーイメージになっていることが多いです。
しばらく炎症が続いていた場合は、外耳道皮膚がびらん状になっていることがあります。
頻度は少ないですが、炎症性ポリープを形成している場合もあります。
ポリープについては、そのままにしていると消炎しにくいので、
腫瘍性病変でなさそう、と確認できれば、すぐに除去します。
真菌(カビ)の感染を伴っているときは、耳鼻科医が見れば、見た目で判別がつくこともありますが、
耳漏(耳だれ)が明らかであれば、菌検査が望ましいです。
細菌との混合感染の場合もあります。
【耳処置のコツ】
① 通常の外耳道炎の場合。
外耳道の徹底的な洗浄、清掃。
タリビット点耳薬/リンデロン点耳薬での洗浄。
顕微鏡下で、耳垢を徹底的に除去します。
ローゼンの針を用いて隙間からゆっくりと耳垢を掻き出します。
このとき、外耳道の皮膚を一切傷つけないように。吸引も不用意に皮膚に当てないこと。
比較的軽症であれば、腫れ上がった外耳道皮膚の隙間に、ローゼン針でリンデロン軟膏を塗り込むと
1日程度で腫れが引いて、外耳道が開通し、きこえも良くなることが多いです。
状態に応じて抗生剤の内服、鎮痛剤を処方します。
② 上記処置で、まったく外耳道に隙間ができないほど腫れが強いとき。
日程、時間の余裕があるときは、外耳道に1〜2日間リンデロンVGガーゼを挿入します。
③ とにかく急いでなんとかしたいとき。
小さく切ったシリコンシートをブジーのようにして、腫れた外耳道に挿入し
一瞬だけでも隙間を作り、可能な限り深部まで掃除します。
外耳道の隙間に小さく切ったベスキチンを挿入します。
ベスキチンにはリンデロン軟膏を塗布。
ベスキチンが入らないときは、小さなシリコンシート(0.5mm〜1mm厚くらい)を
外耳道の隙間に入るところまで挿入しておきます、そこからリンデロン軟膏を浸透させます。
処置に痛みがあるときは、外用キシロカインを浸したガーゼを10分程度外耳道に置きます。
炎症の強い組織では麻酔もききにくいとされるので、麻酔時間は臨機応変に。
どうしても早く消炎したいときは、一日に2〜3回、上記の清掃処置をして、腫れが引いたことがありました。
(過去に経験した例では、手術前日なのに外耳道がパンパンで膿性耳漏を伴って来院されたようなケースが複数ありました。)
別のケースでは、ごく短期間のステロイド内服(PSL5〜10mg/day)を併用したケースも消炎できました。
ステロイド以外の治療が奏功したのかもしれませんが、手段のひとつと考えて良いでしょう。
通常、一度腫れ上がってパンパンになった外耳道は消炎するのに、どんなに早くても1〜2日は要するものと考えています。
その場で ポンと開通するようなものではないです。
内服薬の処方例です。ご参考まで。
【処方例】
【点耳薬】:2種併用 同時に使って、耳の中で混ざってもOK
タリビット耳科用液 (抗生剤) 1日2回
リンデロン点耳液(ステロイド) 1日2回
【抗生剤内服】(必須ではないが、外耳道炎の程度に応じて処方)
クラビット(500) 1錠 朝食後 (薬剤名:レボフロキサシン)
あるいは
フロモックス(100)3錠 毎食後 (薬剤名:セフカペンピボキシル塩酸塩)
【痛み止め】
特にこれでないと、というものはありません。
ロキソニン(60) 薬剤名:ロキソプロフェン 疼痛時 1錠内服など。
【その他】
耳のかゆみが強くて、触らずにいられないような場合には、抗ヒスタミン薬(タリオン、アレロックなど)の内服を処方する。あるいはステロイドと抗ヒスタミン薬の合剤であるセレスタミン錠を1〜2錠/日。
【サーファーへの指導】
サーファー自身で、ティッシュをねじって、こよりのようにして耳の中に入れると、外耳道皮膚を傷つけて、さらに腫れを招くこともあります。
外耳道の痛みや難聴があるような場合は、自分で触らずに、症状が和らぐまで週2,3回の通院で、処置をおすすめします。
外耳道炎で耳の痛みがあり、耳鼻科で処置してもらっても良くならない、
という方はお問い合わせください。
大阪 和泉市の耳鼻咽喉科
電話 0725-50-3333
耳鼻咽喉科専門医:中西 悠
手術は下記施設で行います。
耳鼻咽喉科サージクリニック
老木医院
〒594-0061 大阪府和泉市弥生町2-14-13
Tel: 0725-47-3113